森式キング露出計(初期型) (Mori's KING Exposure Meter) | Camera Museum by awane-photo.com

浅沼商会

森式キング露出計(初期型)

Mori's KING Exposure Meter

 1892年に,ハーターとドリフィールドが「アクチノグラフ」という計算尺式の露出計を発明したとされている。その後,大正時代になると上田写真機店から「コダツク露出計」が発売されたり,雑誌の広告に「清水式曝寫計」が掲載されるようになるなど,日本国内でもさまざまに工夫された露出計があらわれてくる。さらに昭和時代に入ると,アルスからの「佐和式露出計算尺」や玄光社からの「関式サロン露出計」が大々的に宣伝されるようになった。この2つの露出計は,改良を重ねて第二次世界大戦以後も発売が続いていた。

 昭和初期にはこのほかにも,さまざまな露出計が発売されてきたことを,雑誌の広告や記事などから読み取ることができる。森芳太郎氏が考案したとされる「森式キング露出計」は,「佐和式露出計算尺」および「関式サロン露出計」よりも先に発売されたものの1つである。森芳太郎氏は,東京美術学校の教授も務めていたような人物で,写真に関する著書(*1)もある。
 この露出計は,本体が厚紙製の「佐和式露出計算尺」や全体が合成樹脂製の「関式サロン露出計」とは異なり,金属板とガラスとを使ってつくられている。ただ,本体の金属は薄いアルミのようでとてもやわらかく,使い方が荒かったり保管状態がよくなかったりすると,すぐに歪んでしまいそうである。
 「写真新報」1930年2月号に「森式キング露出計の出現」(菅保男)という記事(*2)があり,その記事の末尾に「二月中発売」とあることから,「森式キング露出計」は1930年2月に発売されたものであると判断できる。「キング」というブランドを使っていることからすぐわかるように,製造発売元は,浅沼商会本店となっている。また,「写真新報」1932年7月号には「新訂『キング露出計』に就て 菅保男」という記事(*3)があり,「本器は近く市場にデビューする運びになつて居ります」という表現がある。「写真新報」1932年8月号では新訂版の広告(*4)が掲載されているので,このころに新訂版が発売されたと判断できる。

Mori's KING Exposure Meter
測光種類計算盤式
発売1930年2月

 この露出計は名称に「キング」が入っていることから,浅沼商会が発売する商品であることがわかる。雑誌の広告などでも,発売元が「浅沼商会」であると記載されているし,広告などに掲載された製品の画像でも「浅沼商会」という文字が判読できるものがある。
 しかし,ここで紹介する「森式キング露出計」には,本来であれば「浅沼商会」という名称が記載されると思われる場所に,「金城商会」という文字が入っている。広告に掲載されている製品の画像には,この場所が無銘になっているものもあり,販売店の名称を入れて供給するサービスがあったのではないかという状況が想像できるが,この点については未確認である。

*1 国立国会図書館デジタルコレクションでは,2025年12月現在,以下の書籍の著作者が「森芳太郎」名になっており,閲覧できる。
「最新実用写真術講話 上巻」「最新実用写真術講話 中巻」「写真画のつくり方」「写真の原理 : 通俗講話」「アサヒカメラ叢書 第5」
https://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?

*2 「写真新報」(写真新報社,1930年2月) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1565348/1/22

*3 「写真新報」(写真新報社,1932年7月) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1565377/1/58

*4 「写真新報」(写真新報社,1932年8月) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1588858/1/41