イーストマン

コダック露出計

KODAK'S EXPOSURE METER

(ここに紹介するサンプルは,ご厚意でお借りしているものである。)

 世界初の露出計は,1892年にハーターとドリフィールドが発明した「アクチノグラフ」であるとされている。これは計算尺式のもので,たとえば,小西六から発行された「写真自在」(ヘップウォース 著,佐藤柳坡 訳, 小倉倹司 閲,1894年7月)にある,「ハーター氏及ドレフィールド氏ノアクチノグラフヲ模造シタルモノ」に掲載されている写度計の図(*1)から,その具体的な形がわかる。説明によると「マリオン乾板の感光度を標準」にして露出時間を知ることができる装置とのことである。また,同じ見開きに円形の「露出計」というものも掲載されているが,どのように使うかの説明はない。

 これは,大正時代のものと思われる「コダツク露出計」である。小型でシンプルな円形の露出計になっている。
 表面を見ると,記号としてカタカナのイロハ…が用いられている点や,シャッター速度を示す値が漢字表記(「一秒」や「五十分一」など)になっている点などからも,相応に古いものであることが予想できただろう。
 このような表記から,難しく複雑なものではないかという印象を受けるが,実際にはかなりシンプルなものである。具体的には,裏面にある時間帯とお天気の示された表を見て,時間帯とお天気の組みあわせが示すカタカナの記号を表面であわせればよいだけである。
 たとえば,お昼前後の時間帯(自十時至二時)で晴天であれば,記号は「ホ」となる。つぎに表面で,「ホ」の記号と被写体をあわせる。たとえば,「普通風景」を「ホ」にあわせたとき,シャッター速度を1/100sec(百分一)にするならば,絞りはF6.3とF8の間となる。特徴的なこととして,絞りが「F」ナンバーのほか,「US」ナンバーが併記されている。また「コダック絞り番号」として,1〜4の数値がある。ところが,ここには,フィルムや乾板の感度を設定する項目がない。裏面の表に記された季節も,「三月,四月,八月,九月」に限定されている。この表は,露出計を開くことで,別の面を見せるようにしたり,別の表と入れ替えられるようになっている。そうすることによって,さまざまな感度のフィルムや乾板に対応できるようになっている。

 ここに付属している表は,「第三表」というものだけであるが,この露出計の説明書である「コダツク露出計」(上田貞治郎,1919年)を参照すると,感度別に第一表から第六表までが用意されていたことがわかり,「第三表」が対応する乾板の種類を確認できる。また,北緯40度を中心とする地方で使うことが前提になっていることも,確認できる。この説明書の発行が1919年であることから,露出計の発売もそれと同時期であると判断できる。また,日本語化されていないものが,これよりも前に,アメリカ等で発売されていただろうと考えられる。

KODAK'S EXPOSURE METER
測光種類計算盤式
発売1919年ころ

*1 「写真自在」(ヘップウォース 著,佐藤柳坡 訳, 小倉倹司 閲,1894年7月) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/853953/1/164

*2 「コダツク露出計」(上田貞治郎,1919年) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/961995/1/14