玄光社

関式サロン露出計 IIA型

SEKI'S SALON EXPOSURE METER MODEL II-A

 「関式サロン露出計」は,日本国内における計算盤式露出計としてポピュラーなものの1つである。これは大きく,第二次世界大戦前からの丸型と第二次世界大戦後の角型の2つに分けられる。そして,丸型,角型ともに,さらに複数のモデルに分けることができる。「関式サロン露出計」初代モデルは比較的シンプルなもので,戦前の1938年末ごろに発売されている。
 このIIA型は,戦後の角型として,さいしょのモデルになる。このモデルでは,裏面の「時刻注意」欄に「C.”サンマータイム”採用中は時計の時刻から1時間を減じて本時刻を見ること。」という表記がされていることが,大きな特徴である(右上の画像を参照)。しかし,後継モデルのIIB型にもサマータイムに対応したモデルがあるため,IIA型を特徴づけるのは,いくつかの実用新案や特許が「出願中」である,ということになる。具体的には取扱説明書に記載されており,「影の長さによっても露出がわかる」「合理的な機構とスマートな形態美」という点が実用新案出願中,「時刻盤の設置」が特許出願中となっている。これらは,IIB型の説明書では,それぞれ取得済みになっている。

▲IIA型の取扱説明書
昭和26年4月1日 改訂二十三版印刷
昭和26年4月5日 改訂二十三版発行
「時刻盤の設置」が「特許出願中」になっている。

「関式サロン露出計」のおおまかな分類

 この後,1959年12月ころに「関式露出計セノガイド」が発売されている。関式サロン露出計は1938年から1959年まで20年以上,モデルチェンジを重ねながら発売され,1960年以降は「セノガイド」に大きくモデルチェンジして,1980年代まで発売が続いていた。

▼日本におけるサマータイム

 日本では戦後の一時期,「サマータイム」という制度が導入されていた(当時の表記は「サンマータイム」)。「サマータイム」とは,夏季には時計の針を1時間進めて長い昼間を有効に使おうという制度で,北アメリカやヨーロッパでは多くの国でこの制度が実施されている。日本では具体的には,1948年4月28日に成立した「夏時刻法」の定めにしたがって1948年5月1日から実施され,1952年4月11日に「夏時刻法を廃止する法律」が成立して廃止された。「サマータイム」が継続しなかった理由としては「過労」「睡眠不足」「子どもが寝つかない」などの批判があったほか,アメリカやヨーロッパにくらべて低緯度で湿度も高い日本の気候には適したものではないという見解もある(「サマータイムと気候」朝倉正,日本気象協会発行「気象」1989年8月号による)(*1)。
 「関式サロン露出計」の広告を「アサヒカメラ」で追ってみると,1950年8月号では戦前からの丸型のものの写真が掲載されており,1951年5月号ではこの角型の写真に変わっている。そのことから,ここで紹介する関式サロン露出計IIA型の発売は,1950年秋ころから1951年春ころまでの間であると判断できる。また,1950年10月発行のアルス「別冊CAMERA」(*2)に掲載された広告では,製品写真が角型のものになり「新発売!この新型」という文言があることから,発売時期は1950年10月ころであると考えてよさそうである。これらは,サマータイムが実施されている期間であることとも,整合する。
 なお,1951年9月までに関式サロン露出計IIB型(サマータイム対応版)へモデルチェンジされている。IIB型には,記載内容で複数のバージョンが確認できているが,そのうちの1つに説明書の奥付が「昭和26年9月5日印刷」の「改訂23版」になっているものがある。また,「昭和27年2月5日印刷」の「改訂24版」が付属していたIIB型は,サマータイムに対応している。IIA型の発売期間はごく短いものだったようだ。

 なお丸型でも,戦前に発売されたと思われるもののほかに,サマータイムに対応したものの存在が確認できている。1950年8月号で広告されていたものは,そのサマータイムに対応した丸型のものだろう。

*1 「サマータイムと気候」(朝倉正,日本気象協会「気象」1989年8月号)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3203741/9

*2 「別冊 CAMERA」(1950年10月,ARS)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1827524/38

▼日本のサマータイムに関する法律

◎夏時刻法 (法律第二十九号(昭二三・四・二八))
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/00219480428029.htm

第一条 毎年、四月の第一土曜日の午後十二時から九月の第二土曜日の翌日の午前零時までの間は、すべて中央標準時より一時間進めた時刻(夏時刻)を用いるものとする。但し、特に中央標準時によることを定めた場合は、この限りでない。
第二条 四月の第一土曜日の翌日(日曜日)は二十三時間をもつて一日とし、九月の第二土曜日は二十五時間をもつて一日とする。
夏時刻の期間中のその他の日はすべて二十四時間をもつて一日とする。
第三条 この法律の施行に関し、時間の計算に関する他の法律の規定の適用について必要な事項は、政令で、これを定める。
附則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律の適用については、昭和二十三年においては、この法律の第一条及び第二条において「四月の第一土曜日」とあるのは、「五月の第一土曜日(五月一日)」とする。

◎夏時刻法を廃止する法律 (法律第八十四号(昭二七・四・一一))
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01319520411084.htm

夏時刻法(昭和二十三年法律第二十九号)は、廃止する。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。

SEKI'S SALON EXPOSURE METER MODEL II-A
測光種類計算盤式
発売1950年10月ころ