「佐和式露出計算尺」は,佐和九郎氏がまとめた露出係数表を,逸見製作所の宮崎治助氏が計算尺の形にして簡単に読み取れるようにしたもので,アルスから1936年に発売された。佐和九郎氏の露出係数表はフィルムの改良などにあわせてたびたび見直しがされており,1940年に「佐和式係数露出法 紀元2600年改訂表」というものを発表している。それにもとづいて全面的に改良された新型の広告が,アルスが発行する雑誌「カメラ」において1940年5月号から見られる(*1)。 ここに紹介する「佐和式露出計算尺」は,箱および取扱説明書とセットになった状態で入手した。説明書の奥付は,「昭和十五年七月三十日発行」となっており,説明書の冒頭には「"新"佐和式・露出計算尺」という表記がある。また,本体の姿も,初期型の佐和式露出計算尺とは異なっていて,雑誌広告の新型のものと同様のものになっていることから,本体,説明書とも,新型のものであると判断できる。しかし,広告には「全高級セルロイド製」「定価¥3.50」という記載があるのに対し,この製品はセルロイド製ではなく厚紙製である。また,箱に記載されている価格は,「¥1.80」である。そのため,新型の佐和式露出計算尺には,「セルロイド製」と「厚紙製」のものが存在する可能性があることになる。雑誌に記載されている広告を追ってみると,1940年11月号(*2)からは価格が¥1.80になっている。また,1941年5月号(*3)からは「全高級セルロイド製」という表記も消えている。箱に記された価格表記の前に「まる停」の記号があることから,1939年の「九・一八価格停止令」が関係している可能性があるが,このあたりの経緯についてどのような事情があったのかは,確認できていない。
*1 アルス「カメラ」1940年05月号 (国立国会図書館デジタルコレクション) →https://dl.ndl.go.jp/pid/1501867/1/72
*2 アルス「カメラ」1940(昭和15)年11月号 (国立国会図書館デジタルコレクション) →https://dl.ndl.go.jp/pid/1501873/1/33
*3 アルス「寫眞文化」1941(昭和16)年5月号 (国立国会図書館デジタルコレクション) →https://dl.ndl.go.jp/pid/1541957/1/14
「佐和式露出計算尺」は,佐和九郎氏がまとめた露出係数表を,逸見製作所の宮崎治助氏が計算尺の形にして簡単に読み取れるようにしたもので,アルスから1936年に発売された。佐和九郎氏の露出係数表はフィルムの改良などにあわせてたびたび見直しがされており,1940年に「佐和式係数露出法 紀元2600年改訂表」というものを発表している。それにもとづいて全面的に改良された新型の広告が,アルスが発行する雑誌「カメラ」において1940年5月号から見られる(*1)。
ここに紹介する「佐和式露出計算尺」は,箱および取扱説明書とセットになった状態で入手した。説明書の奥付は,「昭和十五年七月三十日発行」となっており,説明書の冒頭には「"新"佐和式・露出計算尺」という表記がある。また,本体の姿も,初期型の佐和式露出計算尺とは異なっていて,雑誌広告の新型のものと同様のものになっていることから,本体,説明書とも,新型のものであると判断できる。しかし,広告には「全高級セルロイド製」「定価¥3.50」という記載があるのに対し,この製品はセルロイド製ではなく厚紙製である。また,箱に記載されている価格は,「¥1.80」である。そのため,新型の佐和式露出計算尺には,「セルロイド製」と「厚紙製」のものが存在する可能性があることになる。雑誌に記載されている広告を追ってみると,1940年11月号(*2)からは価格が¥1.80になっている。また,1941年5月号(*3)からは「全高級セルロイド製」という表記も消えている。箱に記された価格表記の前に「まる停」の記号があることから,1939年の「九・一八価格停止令」が関係している可能性があるが,このあたりの経緯についてどのような事情があったのかは,確認できていない。
雑誌広告における「佐和式露出計算尺」価格表記等の変遷
*1 アルス「カメラ」1940年05月号 (国立国会図書館デジタルコレクション)
→https://dl.ndl.go.jp/pid/1501867/1/72
*2 アルス「カメラ」1940(昭和15)年11月号 (国立国会図書館デジタルコレクション)
→https://dl.ndl.go.jp/pid/1501873/1/33
*3 アルス「寫眞文化」1941(昭和16)年5月号 (国立国会図書館デジタルコレクション)
→https://dl.ndl.go.jp/pid/1541957/1/14