ニコン

ピカイチ

Nikon / L35AD

 1970年代後半,ピッカリコニカジャスピンコニカによって,コンパクトカメラは「フラッシュ内蔵」「オートフォーカス」の時代になった。コニカに続いて,ヤシカやフジなども,AFコンパクトカメラを発売し,1979年にはキヤノンから巻き上げも電動化したフルオートコンパクトカメラ,キヤノンオートボーイ (AF35M)が発売された。
 1980年代に入って,AFコンパクトカメラを発売していない有力メーカーは,一眼レフカメラ専業だったペンタックスと高級カメラで名を馳せていたニコンだけという状況にあった。そのペンタックスは,1982年にオートロンでコンパクトカメラ市場に参入。そして1983年になってようやく,ニコンもコンパクトカメラ市場に参入してきたのである。つまりこれは,ニコンからはじめて発売されたコンパクトカメラである。このカメラには「ピカイチ」という愛称名が与えられ,後にシリーズ化することになる。
 なお,このカメラは,ニコンからはじめて発売されたレンズシャッターカメラではないし,はじめて発売された一眼レフカメラではないカメラではないことは,いうまでもない。

 このクラスのカメラには,3群4枚構成のテッサータイプのレンズが搭載されることが多いが,「ピカイチ」の35mm F2.8のレンズは4群5枚構成のゾナータイプのレンズをベースにしたものであり,ニコンの意気ごみが感じられる。ただし,レンズ銘は「ニッコール」ではなく「ニコンレンズ」となっている。
 アクティブAF,プログラムAE,自動巻き上げなどの機能は,先行他社の同クラスの製品と同様のものであるが,それらに加えて+2EVの露出補正(逆光対策用)が可能になっている。これは,初心者が失敗の少ない写真を撮ることができるような工夫であると同時に,従来のニコンユーザ,すなわち一眼レフカメラなどに慣れた層にも満足してもらえることを考えた機能だと思われる。
 一方,レンズキャップがファインダー窓も同時に覆うような構造になっていてキャップの取り外しを忘れないようになっている点や,暗いときには内蔵フラッシュが自動的にポップアップするような点は,明確に初心者ユーザを対象に考えられた機能であろう。

 「ピカイチ」(Nikon L35AF)の発売は1983年3月だが,同年9月にクォーツデート付きモデル(Nikon L35AD)が追加された。後期の製品は,フィルム感度に「1000」が追加されている。これは,KODAKから発売された,当時としては最高感度であった超高感度カラーネガフィルム「VR1000」に対応したものだ。


 


Nikon L35AD, Body No.1355311
撮影レンズNikon LENS 35mm F2.8 4群5枚
露出調節プログラムAE
ピント調節アクティブ式AF 0.8m〜∞
内蔵フラッシュGN10 (ISO100)電源単3乾電池 2本
発売1983年

Nikon L35AD (Nikon LENS 35mm F2.8), V100

 内蔵フラッシュを併用して撮影した例である。「Nikkor」レンズではないが,きちんとまじめにつくられたレンズのようで,シャープでクリアな像を結んでくれる。

Nikon L35AD (Nikon LENS 35mm F2.8), GOLD200

 薄曇の日の撮影である。蒸し暑い日で,ハトたちがつぎつぎに水を飲みにやってくる。