1983年は,カラーネガフィルムの大きなモデルチェンジがあった年である。1983年2月には,フジのあたらしいフィルム,フジカラーHR100,HR400が発売された。同じ時期に,小西六(コニカ)のあたらしいフィルム,サクラカラーSR100,SR200が発表されている。コダックは,2月にVR100,VR200,VR400を発表(発売は7月)し,さらに4月には当時のカラーネガフィルムとして最高感度であるVR1000が発売されている。 また,1983年3月には,コダックがDXコードを発表し,順次,フィルムやカメラに取り入れられるようになった。さらに7月には,日本感光材料工業会によって,フィルム感度をASA表示からISO表示に一本化することが示された。
コダックVR1000の発売にあわせて,たとえばNikon L35AD(ニコン 初代 ピカイチ)のように,フィルム感度の設定に「1000」が追加された機種もあった。そして,「VR」のブランドが浸透していくのにあわせたかのように,「VR」の名前を冠したカメラが,コダックから発売された。 1985年12月発行の日本カメラ「カメラ年鑑1986年版」には,Kodak VR35 K6とKodak VR35 K4というカメラが記載されている。どちらも,Made in HongKongの固定焦点,シャッター速度固定の簡便なカメラであるが,コダック銘の35mm判カメラが日本国内で発売されるのは,「ドイツコダック製のレチネット以来,20年ぶり」とのことである。 つづいて,1986年2月発行の日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.85」には,先のKodak VR35 K4,K6にくわえて,K12とK14という機種が記載されている。Kodak VR35 K12,K14は,プログラムAE,オートフォーカス,自動発光フラッシュ,電動巻き上げの,フルオートカメラである。レンズは「EKTAR lens」を名乗る35mm F2.8のもので,非球面レンズを含んだ3群4枚構成となっている。レンズを覆っているカバーをはねあげると,そこがフラッシュになっているというデザインが,なによりもの特徴である。 これらのことからは,Kodak VR35シリーズには,簡便なしくみのシリーズと,オートフォーカスなどを取り入れた比較的高級なシリーズの2種類があったことがわかる。 しかし,この高級なシリーズは続かなかったようで,1987年2月発行の日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.88」では,Kodak VR35 K4aとVR35 K60という簡便な機種だけのラインアップになっている。(その前の1986年9月発行の日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.87」では,取り扱う会社名が,長瀬産業株式会社からコダック・ナガセ株式会社に変更されている)。
さて,ここに紹介するKodak VR35 K10は,VR35 K12やk14と同時期に発売されたものと思われるが,日本カメラ「カメラ年鑑」の1986年版,1988年版には記載がない。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」のvol.85〜89にも記載がない。そのため,正確な発売時期や仕様が確認できていない。 レンズを覆うカバーをはねあげると,高い位置にフラッシュの発光部が位置することは,K12やK14と共通するデザインである。オートフォーカス機構があり,プログラムAEがはたらくことも,これら高級なシリーズと共通している。しかし,巻き上げは手動式で,レンズは35mm F3.5でEKTANAR Lensを名乗るなど,ここは少し格が落ちているようだ。それでも,固定焦点の簡便なシリーズとは違い,しっかりと写ることを目指したカメラであると考えられる。
電源には,006Pという9Vのアルカリ電池を使用する。カメラで006Pを使用するものは,かなり少ないと思われる。このKodak VR35 K10では,電池ボックスのふたに「ALKALINE」と表記され,「Ni-Cd」に×がついていることから,アルカリ電池の使用が指定されていると読み取れる。ところで,上位モデルになるKodak VR35 K12やK14では,電源は「9Vリチウム電池(9Vアルカリ電池の一時的な代用も可能)」とある,この,9vリチウム電池の型番は,なんだろうか。また,k10では「9Vリチウム電池」を使わなくてもよいということだろうか。
フィルム感度は,DXコードで設定される。手動で設定するしくみは,用意されていない。ところで,DXコードの接点は3つしかない。これだけあればISO100,400,1000の識別は可能だと思うが,それ以外の感度のフィルムを装填することは,まったく想定していないということだろうか。 このカメラには,MADE IN JAPANと記されている。「産業技術史資料情報センター」の「産業技術資料データベース」に記載があり,製造者は「チノン株式会社」,製造年は「1985年」となっている(*1)。
*1 http://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?no=103310371449&c=&y1=&y2=&id=&pref=&city=&org=&word=&p=668 コダック VR35 K10(国立科学博物館 産業技術史資料情報センター)
1983年は,カラーネガフィルムの大きなモデルチェンジがあった年である。1983年2月には,フジのあたらしいフィルム,フジカラーHR100,HR400が発売された。同じ時期に,小西六(コニカ)のあたらしいフィルム,サクラカラーSR100,SR200が発表されている。コダックは,2月にVR100,VR200,VR400を発表(発売は7月)し,さらに4月には当時のカラーネガフィルムとして最高感度であるVR1000が発売されている。
また,1983年3月には,コダックがDXコードを発表し,順次,フィルムやカメラに取り入れられるようになった。さらに7月には,日本感光材料工業会によって,フィルム感度をASA表示からISO表示に一本化することが示された。
コダックVR1000の発売にあわせて,たとえばNikon L35AD(ニコン 初代 ピカイチ)のように,フィルム感度の設定に「1000」が追加された機種もあった。そして,「VR」のブランドが浸透していくのにあわせたかのように,「VR」の名前を冠したカメラが,コダックから発売された。
1985年12月発行の日本カメラ「カメラ年鑑1986年版」には,Kodak VR35 K6とKodak VR35 K4というカメラが記載されている。どちらも,Made in HongKongの固定焦点,シャッター速度固定の簡便なカメラであるが,コダック銘の35mm判カメラが日本国内で発売されるのは,「ドイツコダック製のレチネット以来,20年ぶり」とのことである。
つづいて,1986年2月発行の日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.85」には,先のKodak VR35 K4,K6にくわえて,K12とK14という機種が記載されている。Kodak VR35 K12,K14は,プログラムAE,オートフォーカス,自動発光フラッシュ,電動巻き上げの,フルオートカメラである。レンズは「EKTAR lens」を名乗る35mm F2.8のもので,非球面レンズを含んだ3群4枚構成となっている。レンズを覆っているカバーをはねあげると,そこがフラッシュになっているというデザインが,なによりもの特徴である。
これらのことからは,Kodak VR35シリーズには,簡便なしくみのシリーズと,オートフォーカスなどを取り入れた比較的高級なシリーズの2種類があったことがわかる。
しかし,この高級なシリーズは続かなかったようで,1987年2月発行の日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.88」では,Kodak VR35 K4aとVR35 K60という簡便な機種だけのラインアップになっている。(その前の1986年9月発行の日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.87」では,取り扱う会社名が,長瀬産業株式会社からコダック・ナガセ株式会社に変更されている)。
さて,ここに紹介するKodak VR35 K10は,VR35 K12やk14と同時期に発売されたものと思われるが,日本カメラ「カメラ年鑑」の1986年版,1988年版には記載がない。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」のvol.85〜89にも記載がない。そのため,正確な発売時期や仕様が確認できていない。
レンズを覆うカバーをはねあげると,高い位置にフラッシュの発光部が位置することは,K12やK14と共通するデザインである。オートフォーカス機構があり,プログラムAEがはたらくことも,これら高級なシリーズと共通している。しかし,巻き上げは手動式で,レンズは35mm F3.5でEKTANAR Lensを名乗るなど,ここは少し格が落ちているようだ。それでも,固定焦点の簡便なシリーズとは違い,しっかりと写ることを目指したカメラであると考えられる。
電源には,006Pという9Vのアルカリ電池を使用する。カメラで006Pを使用するものは,かなり少ないと思われる。このKodak VR35 K10では,電池ボックスのふたに「ALKALINE」と表記され,「Ni-Cd」に×がついていることから,アルカリ電池の使用が指定されていると読み取れる。ところで,上位モデルになるKodak VR35 K12やK14では,電源は「9Vリチウム電池(9Vアルカリ電池の一時的な代用も可能)」とある,この,9vリチウム電池の型番は,なんだろうか。また,k10では「9Vリチウム電池」を使わなくてもよいということだろうか。
フィルム感度は,DXコードで設定される。手動で設定するしくみは,用意されていない。ところで,DXコードの接点は3つしかない。これだけあればISO100,400,1000の識別は可能だと思うが,それ以外の感度のフィルムを装填することは,まったく想定していないということだろうか。
このカメラには,MADE IN JAPANと記されている。「産業技術史資料情報センター」の「産業技術資料データベース」に記載があり,製造者は「チノン株式会社」,製造年は「1985年」となっている(*1)。
*1 http://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?no=103310371449&c=&y1=&y2=&id=&pref=&city=&org=&word=&p=668
コダック VR35 K10(国立科学博物館 産業技術史資料情報センター)