キヤノン

オートボーイ180

Canon / Autoboy 180

 「オートボーイ」シリーズさいごのラインアップの1つである。発売は2004年で,「オートボーイ」シリーズのみならず,キヤノンのフィルムカメラさいごのラインアップの1つであると言ってもよい。キヤノンはこの後2006年5月に,フィルムカメラの開発を終了することを表明している(*1)。

 レンズ交換のできないコンパクトカメラで,望遠レンズや広角レンズを使うために,かつてはフロントコンバージョンレンズが用いられてきた。それらは大きく,扱いが煩雑で,画質の面でも無理があるそのわりには,望遠や広角の効果があまり大きくないものだった。その後,リアコンバージョンレンズを内蔵したり,ズームレンズを搭載するようになって,扱いやすくなり,画質も向上するようになった。コンパクトカメラに内蔵されたズームレンズの焦点距離は次第に長くなっていき,1988年のオリンパス「IZM300」や1990年のペンタックス「ズーム105スーパー」では100mmをこえ,1992年のキヤノン「JET135」や1994年のペンタックス「エスピオ140」では135mmをこえるようになり,本格的な望遠撮影が楽しめるようになってきた。この間,高感度フィルムが一般的になるのにあわせるかのように,レンズの開放値は暗いものになっていき,いわゆる「暗黒ズーム」の時代になる。
 コンパクトカメラに搭載されたズームレンズで,焦点距離がもっとも長いものは,1998年に発売されたペンタックス「エスピオ200」の200mmであろう。キヤノン「オートボーイ180」の180mmは,それに次ぐものとなる。ただし,ESPIO200のズームレンズは48mm-200mm (4.1倍)で広角域をカバーしていないのに対し,Autoboy180のズームレンズはいちおう広角域までカバーした38mm-180mm (4.7倍)である。カバーする焦点距離の範囲やズーム比を見れば,キヤノンのほうがなにかと高機能ということになる。もっとも,コンパクトカメラでは200mmどころか180mmでも扱いにくく,かなりのオーバースペックと思うのだが。

 背面には,大きな液晶表示板があり,初期のコンパクトディジタルカメラと似た雰囲気がある。ズームレンズを操作するレバーに刻まれたアイコンが斜めになっているので,レバーが緩んで回ってしまったのか?と気になるかもしれないが,すぐ下に刻まれた「SET」という文字も斜めになっているので,それが正常であることがわかる。また,使ってみるとこの斜め加減が,案外とよい具合なのだ。


Canon Autoboy 180, Body No.17000702
撮影レンズCanon Zoom Lens 38-180mm F5.6-12.9
シャッター速度2〜1/305
露出調節プログラムAE,±1.5EVの露出補正可能
ピント調節3点測距パッシブAF
 広角 0.8m〜∞,望遠 1m〜∞,マクロ 0.6m〜
電源CR2リチウム電池 1本
発売2004年ころ

Canon Autoboy 180 (Canon Zoom Lens 38-180mm F5.6-12.9,at 180mm), ACROS

 180mmもあると,かなりの望遠効果を楽しめる。このような望遠レンズを,これだけのコンパクトなボディに収めているのは,驚異的だ。だが,実用性を考えると少々疑問である。ボディはあまりに小さく軽く,フォーカシングのときには鏡胴の伸縮をともなうため,カメラをしっかりと構えるのがむずかしい。また,レンズが暗いため,シャッター速度もあまり稼げない。カメラブレを防ぎたいなら,すなおに三脚を使えばいいのだが,コンパクトなカメラを使うのにそれなりの三脚を持ち歩くのも本末転倒に思える。すくなくとも,望遠レンズの焦点距離は,オーバースペックということになる。


*1 「キヤノン フィルムカメラ開発終了へ」 (2006/05/26,J-CASTニュース)