サモカ

スライドRC-300

SAMOCA / RC-300

 「サモカ」ブランドのスライドプロジェクタである。
 サモカを発売していた「三栄産業」は,1950年月に操業を開始したとのことである。その後,1961年8月にキヤノンの系列会社となり,1980年10月に「三栄産業」から「キヤノン精工」に名前を変更している。そして現在の「キヤノン化成」につながっている(*1)。
 「三栄産業」という名称の会社は1980年まで存続していたようだが,手もとにあるカメラ雑誌等においては,サモカの広告は1957年以前にしか見られない。たとえば,「アサヒカメラ年鑑1961」,「写真工業」1960年12月号,「サンケイカメラ」1959年9月号,「アサヒカメラ年鑑1958」にも,「サモカ」や「三栄産業」の名称は見られない。「アサヒカメラ年鑑1957」の広告にはサモカの名前を見ることができるので,1958年ころから「サモカ」として独自に広告を出すような活動をしなくなっていたということになるだろう。
 また,日本国内で流通していた主要なカメラ・写真用品であれば,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」になんらかの広告を出していることが期待できるが,「サモカ」や「三栄産業」の名称はなかなか見あたらない。唯一,vol.4(1961年3月7日)だけに「サモカカメラ株式会社」のページがあり,「ロマンスライド RC-300」として掲載されている。このことは,「レッドデータカメラズ 昭和のフィルムカメラ盛衰記」(春日十八郎,インパクト出版会,2022年)でも示されている。

 日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.4での宣伝文を見ると,発売時には2本のカートリッジが付属していたことがわかる。この直進式のカートリッジには,マウントされた35mm判スライドを24枚セットできる。有線式リモコンあるいは本体のボタンを押すと,自動的に1コマ送られる。ピント調整も電動式になっており(もちろん,オートフォーカスではなくマニュアルフォーカスである),その操作もリモコンで可能になっている。当時としては,かなりの高機能プロジェクタであったといえる。

SAMOCA SLIDE RC-300, No.
フォーマット35mm判
コマ送り電動式
レンズSAMOCA 80mm F2.8
発売1961年4月ころ

 「写真工業」1961年4月号(*2)の「特集カメラショウの新製品」のなかに,「サモカロマンスライドRC300」という名称が見られる。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.4にのみ掲載があるのは,このときのものだろう。4月の段階では「新製品」なのか「発売予定」なのかは不明だが,発売時期が「1961年4月ころ」というところまで絞り込まれる。
 また,JICA(独立行政法人国際協力機構)の「JICA報告書PDF版」にある文書(*3)の「スライドの上手な活用方法」という項目のなかに,オートスライドの製品例として「サモカスライドRC-300 17,000円」という記述がある。この資料には,「海外移住事業団 昭38.7.15」の印が押されている。このことから,1963年7月までにはすでに発売されていて,存在が知られるようになっていたことがわかる。


*1 https://kasei.canon/ja/corporate/history.html
沿革 (キヤノン化成株式会社)

*2 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3341960
「写真工業」1961年4月号 (国立国会図書館内限定資料)

*3 https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/10923167.pdf
JICA LIBRARY 1092316(7) (JICA報告書PDF版(JICA Report PDF)内の資料)