カシオ

VS-101

CASIO / VS-101

 市販されたさいしょのスチルビデオカメラは,1986年のCanon RC-701とされる。発売当初のスチルビデオカメラは,システム一式で100万円単位の製品であり,もっぱら報道や医療などの業務用向けのものとされていた。1988年ころに,家庭用向けと見なせる10万円前後の価格帯の製品が,多くのメーカーから発売された。その先鞭となった製品の1つに,このCASIO VS-101がある。
 日本カメラ「カメラ年鑑1989年版」(1988年12月発行)に,記載がある。この号では,スチルビデオ関連製品がほかにもいろいろ掲載されている。そのうちスチルビデオカメラとしては,Canon RC-760(59万円),Konica KC-400(49万円),SONY MVC-A7AF(48万円),FUJI ES-1(34万円),MINOLTA SB-70,SB-90(α-7000,α-9000と組み合わせて使うバックシステム,19万8千円)が掲載されているが,これらのなかに本体のみで撮影した画像を再生する機構があると明記されているものは,ない。基本的に,別売のプレーヤやレコーダ,あるいはトランスミッタと組み合わせて使うことが想定されているものである。それに対して,CASIO VS-101は「録画・再生一体型」であることがアピールされており,本体価格も128,000円(ACアダプタやバッテリーパック,ビデオコードなどが含まれたアクセサリキットは別売で17,000円)でほかの機種よりはるかに安価で完結したパッケージになっている。したがって,これをさいしょの家庭向けとして発売されたスチルビデオカメラであるとみなしてよいと考えられる。
 しかしながら,この製品はあまり売れなかったようである。つづいて発売され日本カメラ「カメラ年鑑1990年版」(1989年12月発行)に掲載されている,SONY MVC-C1MVC-A10Canon Q-PIC RC-250などとくらべると,中古品として見かける機会は少ない。また,発売から数年たった1990年7月のものとされるビックカメラのチラシでは,メーカー希望小売価格135,000円のものを,77%引きの29,800円で販売すると示されている。(*1)
 「写真用品&映像ショーカタログ No.18」(1988年3月)では,株式会社樫村のページに掲載があり,本体価格128,000円,アクセサリーキット17,000円とある。翌年の「写真用品&映像ショーカタログ No.19-II」(1989年4月)では,本体価格118,000円,アクセサリーキット17,000円とあり,1万円の値下げがされたようである。上記の,ビックカメラのチラシのメーカー希望小売価格は,値下げされた本体価格に,アクセサリキットを加えた価格が反映されている。
 2インチビデオフロッピーに,50コマの画像を記録できる。規格は統一されているので,他の機種で記録したディスクを再生することや,VS-101で記録した画像をほかのプレーヤなどで再生することなどができるはずであるが,残念ながらディスクドライブが故障しているようで,確認ができていない。
 
 
 

CASIO VS-101, Body No.1002811
撮像素子タイプ2/3型 MOS 撮像素子画素数28万画素
信号方式NTSC標準方式準拠
撮影レンズ11mm F2.8
露出調整外部センサ 受光角11°
プログラムAE シャッター速度 1/8〜1/1000,絞りF2.8,5.6,11(3段階)秒
ピント調節固定焦点(1.0m〜∞)
フラッシュアクセサリシューに接続 同調速度1/60〜1/200秒 ホワイトバランスマニュアル2段 3100°K,5900°K
記録メディア2インチフロッピーディスク
電源専用バッテリーパックBP-60 (6V)
発売1988年

 操作部分は,カメラをかまえたときの手前になる場所に,集中している。
 左のダイアルは,「撮影」「再生」「1コマ消去」「全消去」を選択する。たとえば,「1コマ消去」の位置にして,< >ボタンでトラック番号を選び,シャッターレリーズボタンを押すと,そのコマの画像が消去される。
 中央のスイッチは,ホワイトバラン図(電灯光,太陽光)を切りかえる。
 右のスイッチは,1コマ撮影,連続撮影,セルフタイマー撮影を切りかえる。



*1 https://twitter.com/biccameraP/status/1422890308971503620
 ビックカメラの公式ツイッターの1つ「ビックカメラパソコンStyle」が,1990年7月のものとして,チラシの画像を公開した。