フジ

ポケットフジカ350ズーム

FUJI / Pocket Fujica 350 Zoom

 普及型カメラではまだ珍しかったズームレンズ固定式のカメラである。「カメラ総合カタログVol.57」(日本カメラショー,1976年)では,「ポケットカメラで初めて明るいコンパクトズーム」と表現されている。このカタログでは,ほかにズームレンズを搭載したポケットカメラとしてミノルタ「110ZOOM」が見られるため,実際に「初めて」かどうかは未確認であるが,ミノルタ「110ZOOM」は一眼レフ式の高級機であり,「ポケットフジカ350ズーム」よりかなり大きく,また異なるカテゴリのカメラである。そう考えれば,「ポケットフジカ350ズーム」を「ポケットカメラ初のズームレンズ搭載機」であると言ってよいのかもしれない。なお,ミノルタ「110ZOOM」の価格は,「ポケットフジカ350ズーム」の2倍以上する高価なものである。
 「ポケットフジカ350ズーム」に搭載されたズームレンズのズーム比は1.7倍ほどであり,少し物足りないのは事実である。また,目測式のピント調整は,長焦点時には厳しいものがある。このクラスのカメラを買おうと考える層のユーザがこのカメラを十分に使いこなせたかどうかは疑問であるが,ズームレンズというものの存在を広く知らしめるさきがけとなったのは確かなことだろう。
 低倍率ながらズームレンズをもち,露出調整はお天気マーク式のマニュアル操作であり,これらの動作に電源を必要としないという点は,マニア受けするものと思われる。フィルムの入手の問題さえなければ,十分に実用的なカメラになりえるだろう。

Pocket FUJICA 350 Zoom, Body No.-
撮影レンズFUJINON Z 25mm-42mm F5.6
シャッター速度メカニカル 1/125
絞りお天気マーク式(F16, F9.5, F5.6),フラッシュ撮影時は開放
ピント調節目測式 1m〜
使用フィルム110カートリッジ
発売1976年