ヤシカ

オートフォーカス

YASHICA / AutoFocus

 コニカ「C35AF」(ジャスピンコニカ)についで発売されたオートフォーカスカメラである。オートフォーカスカメラの商品化には,コニカに後れをとったヤシカであるが,オートフォーカスカメラにはぜひとも必要な,あたらしい機能を搭載してきた。いまでは,あたりまえな機能になっている「フォーカスロック」である。

 「ジャスピンコニカ」は,ファインダー中央部の指標に被写体を入れてシャッターレリーズボタンを押せば,自動的にピントがあうようになっていた。たとえば1人の人を撮影する場合は,問題ない。ところが並んだ2人を撮影する場合,ファインダー中央部が人物ではなく,背景になっていることがある。そうなるとピントは背景にあってしまうわけで,背景が人物のすぐ後ろの壁などであれば,ピントが背景にあったとしても被写界深度の範囲内におさまるかもしれないが,無限遠の風景であれば人物は完全にピンボケになるだろう。画面中央部に主となる被写体がなく,背景にピントがあってしまって主となる被写体がピンボケになってしまうこの現象は,「中抜け現象」とよばれた。
 たとえば,カップルが旅行にでかけたとする。オートフォーカスカメラは,シャッターレリーズボタンを押すだけで,確実にきれいに撮ることができるのである。旅行先の観光スポットで,お互いに写真を撮りあうこともあっただろう。また,2人で並んだところを,カメラを渡してだれかに撮ってもらうこともあっただろう。帰ってから受け取ったプリントには,そのときの光景が鮮やかにあらわれているのであるが,2人で並んだ写真だけがピンボケになっていたら,それはもう残念に感じられただろうことは,想像に難くない。

 ヤシカ「オートフォーカス」では,「中抜け現象」を防ぐことができるように,「フォーカスロック機能」がもうけられた。中抜け現象がおきそうな場合は,ピントをあわせたい被写体に向けて「フォーカスロック」ボタンを押してピントを決め,それから構図を整えてシャッターレリーズボタンを押せばよい。主となる被写体がどこにあっても,そこに「ずばり」ピントをあわせることができるわけである。ただし,いちど設定したピント位置を解除することはできない。ヤシカ「オートフォーカス」のフォーカスロック機構には,まだまだ,改良の余地があったのである。
 「日本カメラショー」のカタログを参照すると,「ズバピンの愛称で話題集中」という表記が見られる。コニカの「ジャスピン」に対抗して与えられた愛称だろう。「ジャスピンコニカ」にくらべて中古カメラ店で見かけることは少ない。残念ながら販売数では,「ジャスピンコニカ」には遠く及ばなかったものと思われる。


Yashica Auto Focus, Body No.046021
撮影レンズYASHICA LENS 38mm F2.8 3群4枚
シャッター速度1/60〜1/360
露出調節プログラムAE
ピント調節AF 1m〜∞
発売1978年

Yashica Auto Focus (YASHICA LENS 38mm F2.8), GOLD200

 フォーカスロックはこの種のカメラに必要な機能であるが,シャッターレリーズボタンとは別のボタンで操作することや,フォーカスロックのやり直しができないことは,大きな問題点である。はじめて商品化されたオートフォーカスカメラ「ジャスピンコニカ」よりは改良されたわけだが,まだまだ誰にでも使いやすいカメラという意味では未完成だったということになる。描写については,ややこってりした印象を受ける。これは,悪くない。