京セラ

コンタックスTvs

KYOCERA / CONTAX Tvs

 「高級コンパクトカメラ」とよばれるカメラがあった。その定義は明確ではないが,1980年代末から1990年代にかけて,各社からさまざまな「高級コンパクトカメラ」とよばれるカメラが発売され,1つの流行を形作っていたといえる。1990年代に流行した「高級コンパクトカメラ」の嚆矢といえるものとして,たぶん多くの人が,1984年に発売された「CONTAX T」をあげるであろう。ゾナーを名乗るレンズ(38mm F2.8)を搭載した「CONTAX T」は,露出制御は絞り優先AEで,ピント調整はファインダーに内蔵した二重像合致式距離計を利用しておこなうカメラであった。1990年には,オートフォーカス機構を取り入れた「CONTAX T2」が発売され,このときオートフォーカスのコンパクトカメラも「高級」化の時代にはいったといえよう。
 「CONTAX Tvs」は,電動ワインダーのほかズームレンズも備えた「高級コンパクトカメラ」として,1993年に発売された。レンズは,バリオ・ゾナー28mm-56mm F3.5-F6.5となり,露出制御は絞り優先AEとプログラムAEとが使えるようになっている。ピント調整は,TTLではないパッシブ式のオートフォーカスだが,マニュアルフォーカスも可能になっている。コンパクトカメラとしては,かなり大柄なボディではあるが,撮るための道具として「あったらいいな」と思える機能が一通りおさえられているのはたいへん魅力的である。
 ただし,操作性は,いまひとついただけないところがある。
 まずは,電源スイッチの操作だ。ズームリングが,電源スイッチになっている。このため電源OFF時はレンズが「沈胴」した状態になっており,それはいいのだが,ズームリングが薄いためにその操作がやややりにくい。電源OFFの状態からの速写性は,いまひとつよくないということだ。
 また,ズームリングと同じように絞りリングがあるのだが,これらが操作のときに,意図せずしていっしょに動いてしまうことがある。絞りリングにはPのポジションがあり,絞り優先AEとプログラムAEの切り替えも,この絞りリングでおこなうようになっているため,これが意図せずして動くことがあるのは,たいへん困ることなのだ。
 ピント調整のオートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替えは,カメラ上部のピント調整ダイアルでおこなう。この動きがやや緩いので,これも意図せずして動きそうで,撮影時には警戒が必要だ。ただしこのダイアルが緩いのは,私の手もとにある個体だけのことかもしれない。

 操作性にやや問題があるとはいえ,撮影に必要な機能が確保されており,かつ写りにも安心できるものがあるため,写真を写す道具としてはたいへんよいものだと言っておきたい。ただ,これを発売当時に新品で購入するのは,それなりの勇気が必要だったものと思う。なにせ,設定されていた価格が高い(メーカー希望小売価格 170,000円)。それだけのモノではあるのかもしれないが。


CONTAX T vs, Body No.004789
撮影レンズCarl Zeiss Vario-Sonnar T* 28-56mm F3.5-6.5 6群6枚
露出調節絞り優先AE,プログラムAE
絞りF3.5〜F22シャッター速度16秒〜1/700秒
ピント調節パッシブ式AF 0.5m〜∞,目測式マニュアルフォーカス可能
内蔵フラッシュあり電源CR123A (1個)
発売1993年

CONTAX TVS (Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 28-56mm F3.5-6.5), FUJICOLOR 100

CONTAX TVS (Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 28-56mm F3.5-6.5), FUJICOLOR 100

遠景も近景も,安心して撮影することができる。とくに,広角時の近接撮影が安心しておこなえる点は,好都合だ。