シーアンドシー

モーターマリン2 EX

SEA&SEA / MotorMarine-II EX

 このカメラは,水深45mにも対応した防水性能を誇る。水深45mの水圧に耐えうるよう,カメラボディはたいへん分厚いものになっている。もはや「コンパクトカメラ」とは言い難いサイズであるが,水深3m対応のニコン「ピカイチカリブ」や,日常生活防水のオリンパス「ぬれてもピカソ」などの防水コンパクトカメラとは一線を画した存在の,本格的な水中カメラなのである。
 陸上での撮影も可能だが,全体として水中撮影に特化した仕様になっており,たとえばピント調整はマニュアル(目測)式になっている。コンパクトカメラで一般的な赤外線式オートフォーカス機構が水中では使えないこともあるが,水中での撮影は「置きピン」での撮影が主になるという事情があるそうで,そのことも踏まえてのものだろう。ピント調整は,カメラ前面のダイアルを回して距離を設定するようになっている。0.9mより近距離は「C」(クローズアップ)モードになっており,リアコンバージョンレンズが挿入され,被写界深度を利用して,0.5m〜0.9mの範囲にピントがあうようになる。
 露出調整は,絞りもシャッター速度もマニュアルで設定するようになっている。ファインダー内には露出不足を示すインジケータがあり,シャッター速度を遅くしたり絞りを開いたりして,露出不足インジケータが消えたところが適正露出になる,という使い方ができる。シャッター速度が選べる範囲は1/125秒〜1/15秒まででごく狭いが,シャッター速度と絞りの組み合わせを自由に選べるのは,カメラを使う者としては楽しい仕様である。陸上での撮影を考えれば,シャッター速度はせめてもう1段(1/250秒)ほしいところであるが,このあたりもこのカメラが水中撮影を主に考えられていることを物語る。
 いわゆる「コンパクトカメラ」らしくフラッシュを内蔵しているが,オプションとして,TTL調光も可能な,専用の大型フラッシュが用意されている。見通しのよくない水中ではマクロ撮影をおこなう人が少なくないとのことで,この点も,水中撮影に特化した仕様の1つといえそうだ。
 フラッシュを内蔵したカメラとして,露出計も内蔵されており,しかもマニュアル露出専用のカメラというのは,ほかの例が思いだせない。強いて言えばフジカ「ST-F」が該当するが,「ST-F」はAEではないもののプログラム露光システムであり,任意のシャッター速度や絞り値を選択できるものではない。そういう面から見ても,「モーターマリン2EX」はユニークなカメラである。

SEA&SEA MotorMarine-II EX, No.940200984
撮影レンズ35mm F3.5 3群4枚
シャッター速度1/15〜1/125
絞り3.5 〜 22
露出調節マニュアル,露出不足インジケータ内蔵
ピント調節目測式 0.9m〜∞
クローズアップモード時は0.5〜0.9m固定
内蔵フラッシュGN9 (ISO100・m)電源単3乾電池 (2本)
発売1995年 (*1)

 35mmレンズが固定され,フラッシュも内蔵したいわゆる「コンパクトカメラ」であるが,外部フラッシュのほかに,水中専用の20mmワイドレンズや接写用レンズなどのフロントコンバージョンレンズが多数用意されている。水中カメラとして,充実したシステムが用意されている。

 専用外部フラッシュは,TTL調光に対応している。接点は,専用の4ピンコネクタになっている。

 フロントコンバージョンレンズとして,水中専用の20mmワイドレンズが用意されている。本体のレンズ前面にバヨネットマウントが設けられており,フロントコンバージョンレンズの着脱は簡単におこなえるようになっている。
 水中では空気中とは屈折率が異なることから,とくに広角レンズでは周辺部の収差が目立つようになる。そのため,水中で良好な像を結ぶように設計されたレンズは,陸上ではきちんとした像を結ばなくなることから,水中専用レンズとなっている。
 外付けビューファインダーには,この20mmレンズ用,本体の35mmレンズ用のほかに,15mmレンズ用の指標も記されているので,たぶん15mmワイドレンズも用意されているのであろう。

 本体にクローズアップレンズが内蔵されているほか,水中専用のクローズアップレンズが用意されている。フロントコンバージョンレンズとして,本体のレンズ前面に設けられたバヨネットマウントにはめこむようになっており,着脱が簡単におこなえる。また,撮影距離と撮影とを示す枠を取りつけられるようになっているので,ファインダーを覗く必要なく,マクロ撮影が可能である。

 クローズアップレンズは,何種類か用意されているようだ。いずれも,水中専用となっており,それぞれ専用の枠にあわせて撮影をおこなうことになる。水中では屈折率の関係で被写体が4/3倍大きく見える(3/4倍の位置に見える)ので,陸上でこの枠の位置にあわせて撮影すると,実際よりも3/4倍ほど前ピンになる。陸上で撮影するなら,被写体を3/4倍の位置に近づけて撮らねばならず,そのときにはこの枠が邪魔になる。水中の屈折率にあわせた収差の補正をおこなっていることに加えてこのこともあって,このクローズアップレンズは水中専用ということになっているのだろう。


*1 http://www.ss-sp.com/seaandsea/brandhistory.html
   シーアンドシー サンパック : SEA&SEA_ブランドの歴史
   →「1995年 ソニー特約店となる 35mm水中カメラ『モーターマリンIIEX』開発」とある。