キヤノン

A35デートルクス (キヤノン・ナイター)

Canon / A35 Datelux

 キヤノンで最初の,フラッシュ内蔵のカメラである。このため,「ナイター」という愛称名も与えられている。キヤノネットG-IIIに似たサイズ・外観のカメラで,二重像合致式距離計に連動するファインダーをもっている。二重像合致式距離計に連動したファインダーをもつカメラとしてはじめてのフラッシュ内蔵のカメラであり,2002年に発表された安原製作所「秋月」の登場までは,二重像合致式連動距離計をもつ唯一のフラッシュ内蔵カメラという存在だった。
 露出はプログラムAEで,この点は平凡である。ファインダー内には露出計の指針があり,絞り値を示すようになっている。この指針がF2.8よりも下にあるときは「露出不足」であり,シャッターレリーズボタンがロックされる。最短撮影距離から無限遠までのピントリングの回転角は小さく,細かいピント調整には向いていないように感じられる。しかしながら,距離計の二重像は見えやすく,実用上はピントあわせに苦労しない。また,シャッターレリーズ音がたいへん小さいことも,好印象である。また,このカメラには日付写しこみ機構があることも,大きな特徴である。このため,「デートルクス」という愛称名がつけられているのである。
 電源は,露出計用とフラッシュ用とに,それぞれ必要である。この点は,コニカC35EF (ピッカリコニカ)ヤシカ35MFと同様だ。露出計用の電池はH-D型水銀電池が2個,フラッシュ用の電池は単3型が1個である。


Canon A35 Datelux, Body No.198919
撮影レンズCanon LENS 40mm F2.8 4群5枚
シャッター速度1/60〜1/320
絞り2.8 〜 20
露出調節プログラムAE
内蔵フラッシュGN12 (ISO100)電源露出計 H-D 2個,フラッシュ 単3乾電池 1本
ピント調節二重像合致式距離計連動 0.8m〜∞
発売1977年

Canon A35 Datelux (Canon LENS 40mm F2.8), GOLD200

 当時のフラッシュ内蔵EEカメラの多くが,38mm F2.8の4枚構成レンズを採用するなかで,このカメラは,40mm F2.8の5枚構成レンズというレンズを採用していた。実際に撮影してみると,周辺までとくに大きな問題もみられず,このクラスのカメラとしては十分すぎるものではないだろうか。

 カメラにフラッシュが内蔵されるまでは,室内などのあまり明るくない場所での撮影にも対応できるように,シャッターが長時間露光に対応していたり,5枚あるいは6枚構成大口径のレンズが搭載されていたりしていた。かつてはコンパクトカメラでも5枚構成や6枚構成のレンズが珍しくなかったのだが,コニカC35EF以降の大半のコンパクトカメラは,3群4枚構成のレンズを採用するようになる。4群5枚構成のレンズと二重像合致式連動距離計を搭載したキヤノンA35デートルクスは,ちょっとした高級路線を狙ったものとも考えられるし,キヤノネットなどと似たインタフェースを採用して,古くからのユーザの買い替えを促したものとも考えられる。さて,実際はどうだったのだろう?


 このカメラの特徴の1つに,日付写しこみ機能がある。レンズ鏡胴部周囲のダイアルで日付をセットするが,「年」の数字が78〜88と0〜9だけである。1989年以後は「年」が役に立たなかったが,2000年以後ふたたび役に立つようになったわけだ。2010年以後は,「年」を下1ケタだけで表現するか,「年」を空欄にするしかないだろう。メーカーとしても,そこまでの長期間,このカメラが使われるとは想定していないのかもしれないが。

 

 その後,ボディNo.A30492のカメラを入手した。このカメラでは,日付ダイアルの「年」の数字が79〜89と0〜9になっている。ボディNo.100000台のものよりもNo.A00000台のもののほうが,後に製造されたということだろう。ただ,このカメラが10年も使われればそれで十分,という姿勢は,変わらないようだ。