リコー

AD-1

RICOH / AD-1

 ベストセラーカメラ「リコーオートハーフ」を35mmフルサイズにしたようなコンセプトのカメラであった「リコーオートショット」の後継機に位置づけられるカメラである。
 露出計は電池を用いるものにあらためられ,ボディはプラスチック化されて,非常に小型軽量になった。特徴となるゼンマイによる自動巻き上げ機構は継承されたが,カメラ正面のスイッチにより,1枚ずつ巻き上げるモードと,連写モードが切りかえられる。ゼンマイをいっぱいに巻いておけば,1秒あたり1〜2コマくらいの速さで,15コマくらいの連写ができるようだ。日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」に掲載された宣伝文によれば,「35mm判レンズシャッターカメラで世界初の連写機能内蔵」とのことである。
 また,日付の写しこみ機構も内蔵された。日付の設定はダイアルを自分で動かしてあわせるようになっているもので,クォーツ時計による「オートデート」ではない。なお,「年」の数値は,「79」から「93」までしかない。このカメラの寿命は,「1993年まで」であると想定されていたのだろうか?
 ゼンマイによる自動巻き上げ機構は,リコーのカメラの象徴のようでもあったが,この「AD-1」と翌年発売の廉価版「A-2」(日付写しこみ機構を省略)が最後になった。

RICOH AD-1, No.49 128082
撮影レンズCOLOR-RIKENON 35mm F2.8 (3群4枚)
露出調節プログラムEE
ピント調節目測式 0.9m〜
発売1979年

 カメラの進化は,さまざまな自動化だったとも言える。
 「AD-1」で自動化されたポイントは,露出と巻き上げの2点だ。露出の調整は,「うまい」「へた」が結果に直結するから,慣れない人にとっては,自動化されていればたいへんありがたいだろう。それに対して巻き上げの「うまい」「へた」は,結果にさほど影響を与えない。だから,自動化する意味が薄いようにも感じられる。
 しかし,いざ使ってみると,シャッターレリーズを終えたらすぐに,次の撮影準備ができているというのは,使い心地がたいへんよいことに気がつくだろう。そんな自動巻き上げだが,何枚か撮っているとゼンマイが弱ってくるので,だんたん巻き上げが遅くなってくる。だからときどき,ゼンマイを巻いておいてやる必要があるのだが,それを忘れて,巻き上げが弱々しい音を立てるのも,このカメラの「ご愛嬌」と言ったところだろう。


RICOH AD-1(COLOR-RIKENON 35mm F2.8), DNP CENTURIA 100

 個人的に,リコーのライカ判カメラにはあまりよい印象を持っていなかったが,これはそれまでの印象を見なおさせてくれるような鮮やかで鮮明な写真が得られた。もっとも,このような晴天の順光条件では,どんなカメラ,レンズを使っても,きれいに写るのが「あたりまえ」かもしれない。


RICOH AD-1(COLOR-RIKENON 35mm F2.8), DNP CENTURIA 100

 逆光のかなり「いじわる」な条件であるが,よく踏みとどまってくれている。