KMZ

メプロゼニットE

KMZ / MEPROZENIT E

 ゼニットEは,旧ソ連製のもっともポピュラーな一眼レフカメラである。クリックリターンミラーになっているが,自動絞りをもたず,内蔵露出計は外光式となっている。ゼニットEは製造台数も多く,輸出も盛んにおこなわれたようである。このメプロゼニットEは,日本の明貿産業という商社が輸入したもので,スーパーマーケット「ダイエー」を通じて販売されたものである。標準レンズとして日東光学の「コミナー」レンズ(MEPRO-KOMINAR 55mm F2.8)を装着し,13,900円という低価格な一眼レフカメラとして,1971年12月から販売された。このときは全国のダイエーのうち38店舗で販売され,2か月で1500台が売れたとのことである(*1)。この時期に低価格を武器にしていた「ペトリV6F2」(55mm F2レンズ付き,露出計なし)が23,800円だったことと比較すれば,この価格はまさに驚異的だっただろう。明貿産業はこののちに2万台の販売を計画し,上位モデルとしてのMEPROZENIT-Bや2眼レフカメラLUBITELなどの販売も計画している。また,それにともなって,販路も広げる計画だったようである。
 上面から見ると,シャッター速度ダイアル軸が,シャッターの動きにともなって回転するしくみであることがわかる。「ゼニット」を製造していたKMZは,ライカコピー機として有名な「ゾルキー」シリーズを生産していた工場であることから,これは「ゾルキー」をベースにつくられたものであると推定できる。そのためか,低速シャッターに対応していない。メカニズム的には,当時としても時代遅れな面が強いカメラであるが,家庭のスナップ写真などに使うには十分すぎる性能だっただろう。そして,「マニュアル式カメラって,こんなに簡単に使えるのか。」などと感じたのではないだろうか。

MEPROZENIT E, No.72080754
シャッター機械制御横走り布幕
シャッター速度B, 1/30〜1/500シンクロ1/30sec,X,M
露出計外光式セレン露出計(連動なし)露出モードマニュアル
マウントM42マウント
発売販売開始1971年(同型カメラの製造は1960年代半ば以降)

*1 「実例 全国一流会社の新傾向 : 全国躍進企業の新技術から新販売戦略まで 週刊現代イヤーブックス'73」(講談社,1972年)
https://dl.ndl.go.jp/pid/11956166/1/87