キヤノン

イオス・キス

Canon / EOS kiss

 キヤノンEOSシリーズのエントリーモデルであり,EOS1000Sの後継機にあたる。ファインダーにはプリズム(ペンタプリズム)のかわりに,ミラーを組みあわせたもの(ペンタミラー,ダハミラー)が採用された。ペンタプリズムがガラスの塊であるために重いのに対し,ペンタミラーは中空になるため,大幅に軽量化できる。以前のエントリーモデルであるEOS1000では500g,EOS1000Sでは470gだったのに対し,EOS kissは370gという当時としては画期的な軽量カメラになった(いずれもボディのみの重さ)。ペンタミラーを使ったファインダーでは,ペンタプリズムを使った場合にくらべて像の見え方が大幅に劣ることになるが,オートフォーカスを利用して撮影することが主になると考えられるこのクラスのカメラでは,ファインダー像の見え具合はそれほど大きな問題にならないという判断ができることになる。ユーザ層を考えた場合はそれよりも,カメラが軽量化でき,価格が抑えられることのメリットの方が大きい。
 カメラの機能としては,マルチモードAE,フラッシュ内蔵,多重露出も可能など,一通りのものを備えている。一方で,ファインダー視野率は90%,ファインダー倍率は0.7倍で,ペンタプリズムを使わないことの影響があらわれている。また,レンズマウントはプラスチック製になり,ここでも軽量化が追求されている。これらの要素を見ればいかにも安物というわけだが,それなりの強度は備えているようで,使っていて不安を感じることはない。レンズマウントがプラスチック製であっても,同じようにプラスチック製のマウントを持つ軽量なズームレンズをつけっぱなしにするのであれば,強度や摩耗の面での心配もあまりないだろう。
 とにもかくにも,安物である。しかしながら,徹底的に小型軽量化かつ低価格化させたことで,一眼レフカメラをより一層,身近な存在にした功績は大きい。この後,各社がこの路線の一眼レフカメラを相次いで発売することになるのだから,初代EOS kissも,エポックメイキングなカメラとして後々まで長く語り継がれるべき存在なのである。

Canon EOS kiss, No.6136190
シャッター電子制御縦走り金属幕
シャッター速度B,30〜1/2000スピードライト同調1/90sec,X
露出計TTL 6分割評価測光,中央部部分測光
露出モードインテリジェントプログラムAE,絞り優先AE,シャッター速度優先AE,深度優先AE,イメージプログラムAE(4種),マニュアル
マウントキヤノンEF
発売1993年