ニコン

FM10

Nikon / FM10

 1995年に発売された,マニュアル露出専用機である。従来のEMやFGシリーズと同様の軽量ボディが,大きな魅力である。1995年にもなると,ワインダーを内蔵したオートフォーカス機が主流になりつつあったので,その軽さは際立つものだった。
 シャッター速度は1秒〜1/2000秒をカバーし,ファインダー内に3つのLEDが5段階に露出を表示する。このスペックだけを見れば,New FM2の下位モデル,FMの後継モデルに思われるが,実際にはまったく違う系列のカメラである。ボディのサイズやデザインはまったく異なり,ワインダーやデータバックの装着に,対応していない。また,ファインダー内に,シャッター速度や絞り値を表示するしくみも,設けられていない。手触りや操作感触などを含めて,いかにも廉価版である。しかしながら,歯切れよいシャッター,見やすい露出計表示,プレビューや多重露出機構など,基本的な機能はちゃんと用意されている。マニュアルカメラとして,十分な実用性を備えている。

 よく知られているようにFM10は,コシナが廉価な一眼レフカメラとして発売したモデルをもとにつくられたものとされている。

Nikon FM10, No.2055278
シャッター機械制御縦走り金属羽根
シャッター速度B,1〜1/2000スピードライト同調1/125sec,X接点
露出モードマニュアル
露出計TTL中央部重点測光,3点LED式
ファインダー内情報3点LED式露出計
発売1995年

 手にした瞬間に,このカメラが廉価モデルであることが感じられるだろう。そんな機種だが,2015年6月現在,ニコンが発売するフィルムカメラは,最高級機「F6」とこの「FM10」の2機種だけになってしまった。とにもかくにも,いまだに現行機種である。2015年4月1日付で大幅に値上げされたが,プロ向けも一般向けもほとんどすべてがディジタルカメラになってしまったいまでも,新品で購入できるのは貴重な存在である。ニコンの交換レンズは,中古市場にも豊富に流通しているので,これからはじめてフィルムの一眼レフカメラを買う人でも,まだまだ十分に楽しむことができるだろう。

 2015年4月の価格改定によって,FM10ボディが41,000円から61,000円に,約150%の値上げとなった(税別)。これにともなって,廉価版標準ズームレンズ (Ai Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.5-4.8S) およびケース,ストラップのセット価格も,55,000円から75,000円に値上げされている。大幅な値上げは,これからFM10を買おうと思っている人にとっては厳しく残念なことであるが,見方を変えて「値上げすることによって,これからも生産を継続する」という姿勢の表明であると,前向きなこととして評価したい。


*1 ニコン一眼レフカメラ FM10 希望小売価格改定のお知らせ (株式会社ニコン)