フランツ・コッホマン

コレレ

Franz Kochman / Korelle

 昭和10年代に製造された,ドイツ製の小型カメラである。ここで取りあげたものは6×4.5判だが,このシリーズには6×6判のものなど数種類あったようだ。1938年のアサヒカメラ(6月号)の広告を見てみると「ニューコレレF4.5プロンター付き」の中古品を80円で販売している店がある。この時代の新製品「ローライフレックスオートマット」がおよそ800円であることから,コレレのシリーズは普及品であったと考えられる(それでも,当時の貨幣価値で考えれば,かなり高価な品物であったようだ)。実際,このコレレには,普及品によく用いられる3枚玉レンズであるシュナイダーのラジオナーが搭載されている。
 カメラ上面のつまみを手前に引くと,ばねの力でレンズボードが飛び出し,撮影可能な状態になる。このようなしくみをもつカメラは,スプリングカメラとよばれている。このような折りたたみ式カメラの特徴として,たたむと非常にコンパクトになることがあげられる。35mm一眼レフよりも小さな中判カメラとして,ちょっとこだわるスナップ撮影に最適だ。3枚構成の銘玉 "Radionar" の描写も,まさにスナップ向きである。
 なお,このカメラは蛇腹の傷みが激しかったため,もとの蛇腹を取り去って,自作のものに交換してある。

Korelle, Body No.884546
レンズSchneider Radionar 7.5cm F4.5
シャッター速度B, T, 1/25, 1/50, 1/100, 1/125 (Prontor)
ピント調節目測式,最短撮影距離3.5ft
フィルム送りノブ巻き上げ,赤窓式
画面サイズ6cm×4.5cm 発売1930年代後半?

 スプリングカメラというと,ツァイス・イコンのイコンタシリーズやネッターシリーズなどのように,2本のタスキで支えられ,ベッド部を兼ねたトビラが向かって右側に開くタイプのものが多いように感じられる。そして,トビラには「脚」がついており,カメラを立てておくことができる。それに対してこのカメラのレンズは4本のタスキで支えられ,トビラは単に右に開くだけである。ゲルツのテナックスのような古いタイプのカメラの形態を残していると考えるべきだろうか。それとも,イコンタに似せないような工夫がされたと考えるべきだろうか。
 このカメラに搭載されたレンズは,定評あるシュナイダー社のレンズであるが,どちらかというと廉価版の3枚構成レンズ「ラジオナー」である。また,シャッターは,1/25秒から1/125秒までしかない「プロンター」がつけられている。1秒から1/250秒までをカバーする「コンパー」にくらべれば,これも廉価なパーツが採用されているということだろう。
 しかし,その描写には,やはり侮りがたいものがあるのだった。

Korelle (Radionar 7.5cm F4.5), EPD

Korelle (Radionar 7.5cm F4.5), EPN

 まさにポケットに入るサイズの中判カメラである。目測式であることから,撮影に絶大な信頼をよせることは少々抵抗があるものの,Radionarの描写は素直であり,慣れれば問題なく撮影することが可能であろう。