ボルタフィルム

BOLTA film

ボルタフィルムとは

 ボルタフィルムは,ドイツの「ボルタビット」というカメラ用につくられた規格である。35mm幅のフィルムが,裏紙とともにスプール(軸)に巻き取られたもので,24mm×36mmサイズで10枚撮り,24mm×24mmサイズで12枚撮りのものが販売されてきた。裏紙には,コマ番号が印刷されている。巻き上げは,裏蓋に設けられた窓からその数字を読み取っておこなう。このようなしくみを利用すれば,自動巻き止めやフィルムカウンタなどの複雑なメカニズムが必要なく,カメラの価格を抑えることができる。そのため,おもちゃカメラに利用されることも多かった規格のフィルムである。
 日本国内では,ライトパンフィルムで有名な愛光商会から比較的近年まで供給されてきたが,現在,この規格のフィルムは市販されていない。スプールと裏紙があれば,35mmフィルムを巻きなおすことで,フィルムの自作が可能である。「ボルタビット」発売当時の広告でも,「一般に發賣されてゐるライカ用フヰルムを御自分でスプールに巻いてご使用になれます」(「アサヒカメラ 1937年8月号」の広告より)という文面が見られるので,このような巻きなおしは,想定の範囲内であったということであろうか。

ボルタフィルムの巻きなおし

 ボルタフィルムのスプールと裏紙があれば,35mmフィルムを巻きなおすだけでよいので,フィルムの自作は簡単である。ボルタフィルムを1本入手して,スプールや裏紙を大切に再利用しよう。
 まず暗室内で手さぐりで,ボルタフィルムの始まりの位置と終わりの位置に折り目をつけておく。

 フィルムのスタート位置にあわせて,35mmフィルムの先端を粘着テープでとめる。この作業は明るいところでおこなってもよいが,フィルムが必要以上に感光してしまわないように注意すること。

ここでふたたび暗室での作業になる。
 フィルムを終わりの折り目の位置までひっぱりだし,折り目の位置でフィルムをカットする。
 カットしたら,終わりの折り目にカットしたフィルムの先端をあわせ,途中でたるんだりしないようにスプールに巻きとっていく。最後まで巻きとったら,ほどけないように粘着テープで軽く止めれば完成だ。

(→参考:「撮影日記」2009年10月15日)。

愛光商会 ライトパンカラー(ボルタ)

 日本国内でボルタフィルムを最後まで供給していたのは,愛光商会「ライトパン」のようである。「写真用品ショー」カタログを参照すると,1988年版までは「ライトパンカラー」のラインアップにボルタフィルムの記載があるので,少なくともこのころまではボルタフィルムが供給されていたのは確実なようである。また,1986年版までは,モノクロフィルム「ライトパンSS」のラインアップにもボルタフィルムの記載があった。

 このフィルムは,愛光商会「ライトパンカラーII」のボルタ判である(使用期限1982-3)。「写真用品ショー」カタログに「ライトパンカラーII」が掲載されていたのは,1980年版から1982年版までの3年間であるが,このときのラインアップには「ボルタフィルム」がない。ここに記載がないからといって,供給がまったくなかったというわけではないようである。なお,1983年版からは「ライトパンカラーHR100」にモデルチェンジしている。

(→参考:「撮影日記」2009年10月13日)。