第7展示室(3)

スチルビデオカメラ

still video cameras

電気信号で記録するあたらしいカメラ

 1985年に富士フイルムが,ネガフィルムや写真を「ビデオフロッピー」に記録するサービスを開始した。画像が記録された「ビデオフロッピー」は,専用のプレーヤを使ってテレビに映しだし,鑑賞することができるものだった。その後,「ビデオフロッピー」に記録するカメラも一般向けに発売されるようになった。それが,スチルビデオカメラである。
 スチルビデオカメラは,電気信号で画像を記録するカメラであるが,アナログ信号として記録されるので,ディジタルカメラではない。しかし,ディジタルカメラへ発展する途中段階のものと考えることもできるので,ここで扱うことにする。

業務用から一般用へ

 1981年にSONYが発表した「マビカ」試作品が,最初のスチルビデオカメラとされている。そして,1986年のCanon RC-701が,市販されたはじめてのスチルビデオカメラとされている。つづいて,オートフォーカス一眼レフカメラMINOLTA α-7000およびα-9000の裏蓋と交換して使う,「スチルビデオバック」(α-7000用がSB-70,α-9000用がSB-90)が発売された。これらは本体が数10万円するものである上に,記録した画像を再生したりプリントしたりする専用の装置が必要で,それらシステム一式をあわせると数100万円になりかねないものだった。個人が趣味で使うようなものではなく,報道など限られた業務用として位置づけられていた。
 1988年に発売されたSONY MVC-C1が,さいしょの一般向けのスチルビデオカメラとされる。その後,キヤノンやカシオなど,数社からスチルビデオカメラが発売された。

そして,ディジタルへ

 しかし,スチルビデオカメラはあまり広くは普及しなかったようだ。その理由としてはいろいろなものが考えられるが,まずは画質があまりよくなかったことがあげられる。ムービーのビデオカメラにくらべれば小さく安価であったが,フィルムを使うコンパクトカメラほど小さく安価にできたわけではない。写真をテレビに映して鑑賞すrのは,あたらしい楽しみ方だったかもしれないが,その行為そのものが受け入れられたわけでもない。
 1995年に発売されたCASIO QV-10によって,ディジタルカメラが広く知られるようになるとともに,アナログ記録のスチルビデオカメラはその存在意義役割を失っていった。ディジタルカメラCASIO QV-10は画質面ではスチルビデオカメラと大差ないものだったものの,小型化されたこと,本体に液晶モニタが内蔵されてテレビに接続しなくてもすぐに画像を見られたこと,そして撮影したデータをパソコンに転送して利用できることなどのメリットがあったのだった。

スチルビデオカメラ

スチルビデオカメラは,記録メディアとして2インチフロッピーディスクを使用する。画像はアナログの電気信号として記録され,1枚のディスクで50コマの撮影が可能だった。記録した画像をすべて消去して,ディスクを再利用することも可能であり,不要なコマだけを消去することもできた。

京セラ DA-1

KYOCERA / DA-1


ソニー マビカ (MVC-A10)

SONY / Mavica MVC-A10


キヤノン Q-PIC RC-250

Canon / RC-250


キヤノン Q-PIC RC-250 ホワイトボディ

Canon / RC-250


ソニー マビカ (MVC-C1)

SONY / Mavica MVC-C1


カシオ VS-101

CASIO / VS-101


ビデオフロッピー再生装置

一般向けにスチルビデオカメラが発売されるのに先だって,富士フイルムによってネガフィルムや写真の画像をビデオフロッピーに記録するサービスがはじめられた。それにあわせて,ビデオフロッピー専用プレーヤが発売されている。
 スチルビデオカメラには,撮影専用で再生機能をもたない機種もあった。そのような機種で撮影した画像は,別のプレーヤで再生したり,再生機能を付加するオプション品を接続したりする必要があった。


ソニー 再生アダプタ MAP-T1 (MVC-C1用)

SONY / MAP-T1