ペンタックス

ズーム105スーパー

PENTAX / ZOOM105 Super

 カメラは,誰にとってもできるだけ簡単な操作で,確実に,きれいな写真が撮れるように進化してきたといえる。とくに,プロやマニア向けではないカメラにおいてその傾向が顕著であり,そのなかでもコンパクトカメラとよばれるカメラにそのための新機能が特徴的に発現する。一眼レフカメラよりも早い時期に,露出もピントも巻き上げも,すべて自動化が実現された。
 そして,「望遠レンズを使いたい」という要望に答えるため,当初は,フロントコンバージョンレンズが提案された(フロントコンバージョンレンズが用意された例:オリンパス AF-L (オリンパス ピカソ))。しかしこれは,画質もいまひとつであり,大きく重く,操作が煩雑になる。誰にとっても簡単な操作で望遠レンズが使えるようになるのは,リアコンバージョンレンズを内蔵した「2焦点レンズカメラ」が提案されて以降のことになる(リアコンバージョンレンズ内蔵の2焦点カメラの例:ニコン L35TWAD (ニコン ピカイチ・テレ))。このタイプのカメラでは,レバーやボタンの操作1つで,望遠レンズでの撮影と広角レンズでの撮影とを簡単に切り替えることができるようになった。
 だが,フロントコンバージョンレンズであってもリアコンバージョンレンズであっても,それによる焦点距離の変化は,おおむね1.5倍前後で,せいぜい2倍程度までである。コンパクトカメラの標準レンズは,どちらかというと広角レンズになる35mmから38mmくらいのものが多い。その1.5倍だと50mm台だから,望遠レンズというよりも標準レンズである。望遠効果を実感するには,せめて80mmくらいのレンズを使いたい。コンパクトカメラにズームレンズが内蔵されるようになって,ようやくそれが実現された(80mm望遠レンズが使える初期のズームコンパクトカメラの例:コニカ Z-up 80)。
 コンパクトカメラに内蔵されたズームレンズは,やがてその「ズーム比」を競うようになる。レンズ交換のできないコンパクトカメラこそ,画質に妥協してでも高倍率ズームレンズを使いたいと考えるのは自然なことだし,商売の面から見てもズーム倍率ほど一般の人にアピールしやすい数値もないだろう。

 このカメラは,38mm〜105mmのズームレンズを内蔵した。望遠側の焦点距離が105mmというのは,この当時としては最長のものである。ペンタックスは後に,望遠側が200mmというコンパクトカメラを発売しているので,望遠側の焦点距離を伸ばすのは,ペンタックスの意地なのだろうか?と思ってしまう。そういえば,昔のペンタックスのテレビコマーシャルでは「望遠だよ,望遠だよ」とアピールしていたものだ(それは,一眼レフカメラの宣伝だったけれども)。

PENTAX ZOOM105 Super, Body No.9956054
撮影レンズPENTAX Zoom LENS 38mm F4〜105mm F7.8 9群11枚
露出調節プログラムAE
ピント調節アクティブAF
AFマクロ 1/6倍,スーパーマクロ 1/3倍
内蔵フラッシュ自動発光,日中シンクロ,発光禁止可能電源CR123Aリチウム電池 2本
発売1990年

 PENTAX ZOOM105 Superは,当時最長の望遠レンズだけではなく,多機能さも特長である。フラッシュの自動発光,強制発光,発光禁止,デーライトシンクロ撮影,バルブフラッシュ撮影などは,この後のペンタックスのコンパクトカメラでよく見られる機能である。それにくわえて,多重露光やインターバル撮影など,一眼レフカメラにもあまり標準装備されていないような特殊な機能も満載である。