オリンパス

トリップ35

OLYMPUS / TRIP 35

 明るさに応じてシャッター速度(2段階)と絞りを切りかえるプログラム式の自動露出機構をもつ,ライカ判のレンズシャッターカメラである。露出不足時には,ファインダー内に赤いマークがあらわれ,シャッターレリーズボタンがロックされるようになっている。ピント調整は,目測式。なお,ピントの目盛は,ファインダー内からも確認ができるようになっている。さらに,フィルムの巻き上げを背面のノブでおこなうという点も含めて見れば,ちょうど同時代のハーフサイズカメラ,オリンパス「ペンEES-2」をライカ判にしたようなカメラだと考えることができる。
 絞りリングをAの位置にするとプログラムAEになるが,このときのシャッター速度は,1/30secと1/250secの2段階に自動的に切り替えられる。フラッシュ撮影時など,任意の絞りを選択したときのシャッター速度は1/30secである。
 よく知られているように,オリンパス「ペンEE」シリーズは,大ヒットした商品である。大ヒットの要因は,「小さく」「安く」「簡単に」「よく写る」という一般向けカメラに求められる本質を十分に満たしていたことだろう。そして,少しずつモデルチェンジしながら,長い間,発売が続けられた。この,オリンパス「トリップ35」も,「ペンEE」シリーズと同じような要素を満たしていたのだろうか,1968年から1985年までの長期にわたって,日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」に掲載され続けてきた。その間,モデルチェンジがおこなわれなかったのは,廉価なライカ判カメラとしては十分な完成度に達していたためであろう。1980年代に入ると,他社からはこの種のカメラのラインアップがなくなり,まさにシーラカンスのごとき存在感を保ちながら発売されつづけたのであった。

OLYMPUS TRIP35, BODY No.1163777
撮影レンズD.Zuiko 40mm F2.8
シャッター速度1/30sec, 1/250sec
絞りF2.8〜F16
露出調節プログラムAE
ピント調節目測式 0.85m〜∞
発売1968年

 上記の後,もう1台「トリップ35」を入手した。2台目の「トリップ35」のボディに刻まれたシリアルナンバーはNo.4318596で,入手時に付属していた取扱説明書には「昭55年」というメモ書きがあった。「トリップ35」としては,後期の製品にあたると思われる。これら2台のシリアルナンバーの差は,300万以上あるので,「トリップ35」は少なくとも300万台以上が出荷されたものと考えられる。20年近い歳月の差と,数100万台の数がありながら,これら2台に見られる外見上の違いは,シャッターレリーズボタンの色くらいである(内部機構には,さまざまな改良がされているのかもしれないが)。外見の変化がないことは,まさにシーラカンスのごとき存在感といえるのではないだろうか。