チノン

ベラミ

CHINON / Bellami

 CHINON Bellamiは,カバーが両側に開く「観音開き」になっていることが,大きな特徴である。そして,カバーの部分に「馬車」の絵が描かれていることも,印象的である。

 レンズは,きれいな像を結ぶために必要な,カメラにとってもっとも重要な部品の1つである。そして,レンズの表面は,つねに無防備な状態で被写体に向けられる。レンズの表面に著しい傷や汚れがつくと,撮影結果にも大きな影響をあたえなかねない。そこで,撮影に使わないときには,レンズの表面をなんらかの方法で保護することが考えられる。もっともお手軽なものとして,レンズキャップを装着する方法がある。撮影しないときにレンズの表面を保護することは,これで完璧だ。ただしこの方法にも,欠点はある。1つは,キャップを紛失する可能性があること。そのほか,一眼レフカメラでなければ,キャップをしたまま撮影をしてしまう可能性もある。
 それに対応できる方法として,OLYMPUS XAに見られるような,レンズバリア方式がある。レンズバリアを開くことで,電源スイッチがONになり,シャッターレリーズが可能になる。また,ファインダーも開くので,レンズキャップをしたまま撮影するという失敗を完全に防ぐことができる。撮影後にレンズバリアを閉じれば電源OFFになり,レンズ表面も保護されることになる。
 もう1つの方法として,MINOX 35ELに見られるような,カバー付きの沈胴式がある。カバーを開くと同時にレンズが引き出されて,撮影態勢になる。撮影後にカバーを閉じると,レンズがボディ内に引っこみ,その表面がカバーされる。このスタイルは,IKONTAなど中判のフォールディングカメラからKodak Retinaなどを経て発展したものと考えることもできる。
 カバー付きの沈胴式は,IKONTAにせよRetinaにせよMINOXにせよ,どこか一方向にのみカバーが開くものであった。観音開きのスタイルをもっているカメラは,CHINON BellamiのほかにはVoigtlanderのVitessaがあるくらいで,例が少ない。

 CHINON Bellamiの前面カバーは,巻き上げレバーに連動している。カバーが閉じた状態で巻き上げレバーを引き出すと,カバーが開き,レンズが出てきて,撮影態勢になる。フィルムを巻き上げていない状態であれば,そのまま巻き上げレバーを使って,フィルムを巻き上げてシャッターをチャージできる。そのまま巻き上げレバーを元の位置へ押しもどせば,レンズが引っこんでカバーが閉じる。カバーの開閉を伴うので,このあたりの動作は少々重く感じる。
 撮影そのものは,プログラムAEと目測式ピント調整の組みあわせなので,軽快におこなうことができる。ピントリングはカバーにはさまれた位置にあるが,上下には空きがあるので,ピント調整の操作にとくに支障は感じない。
 フラッシュ撮影は,専用のフラッシュを装着しておこなう。フラッシュをはずすと,カメラはとてもコンパクトになる。

CHINON Bellami, No.133938
撮影レンズCHINONEX COLORD LENS 35mm F2.8
シャッター速度1/8〜1/1000
露出調節プログラムAE
ピント調節目測
発売1981年

 巻き上げと同時にカバーがパカッと開くと,さあ撮るぞ!という気分を盛り上げてくれる。巻き上げレバーをもどしてレンズバリアを閉じると,さあ,次の被写体をさがしに行こう!という気分になる。撮影時の気分が盛り上がりやすいカメラだと思う。


CHINON Bellami, CHINONEX COLOR LENS 35mm F2.8, FUJI 100

 晴天時の描写に,文句があろうはずがない。


CHINON Bellami, CHINONEX COLOR LENS 35mm F2.8, FUJI 100

 遠景の描写にも,じゅうぶんなものがある。


CHINON Bellami, CHINONEX COLOR LENS 35mm F2.8, FUJI 100

 ピントがあった部分が浮かびあがって見えるのは,フレアなどの影響が少なく,さらにボケ方がすなおなせいだろうか。


 CHINON Bellamiは,操作性も楽しく,描写もじゅうぶんなものがある。発売時,とくに高い評価されていたようなことは耳にしないが,過小評価されていたのではないだろうか。
 のちに,この名前を引き継いだCHINON Belami AFが発売されているが,CHINON Bellamiの後継機にふさわしい楽しいカメラとは思えない。厳密には,名称も異なっているわけで(「l」の数が違う)。