フォクトレンダ

ベッサマチック

Voigtländer / BESSAMATIC

 自動絞り機構をもったレンズシャッター式の一眼レフカメラである。クイックリターンミラーは実現されていない。外光式セレンメーターを内蔵しており,ファインダー内で露出を確認できるようになっている。ただし,巻き上げをおこなってミラーを降ろさなければメーターの指針が見えず,露出を確認することができない。露出をあわせる操作は,煩雑である。まず,シャッター速度を設定する。次に左手側(巻き戻し側)のダイアルを回して,ファインダー内に表示される「○」のついた針を,露出計の指針にあわせる。これで,適正な露出が得られる。
 レンズシャッター式の一眼レフカメラの場合,撮影レンズが固定式になっているものが多いが,ベッサマチックはデッケルマウントを採用してレンズ交換を可能としている。デッケルマウントは,コダックのレチナレフレックスなどでも採用されているが,マウントにメーカーごとの爪があって,そのままではほかのシステム用のレンズを流用することができない。レンズを流用するためには,ボディ側マウント内の識別爪を削る必要がある。

 写真を撮るとき,ピントと露出をあわせる必要がある。クラシックカメラの場合,ピントや露出を確認する機構のないものもあるが,ベッサマチックは一眼レフ式のために,ピントの確認は可能である。また,露出計を内蔵しているので,露出の確認も可能である。
 しかし,このカメラが使いやすいか?と問われれば,「No!」と答えるしかないだろう。クイックリターンミラーになっていないため,巻き上げをしなければミラーが降りず,ファインダー内にはなにも見えない。ところで,ベッサマチックは,レンズシャッター式の一眼レフである。この方式のカメラは,1回のシャッターレリーズ動作にともなってシャッターが何度も開閉する必要があるなど機構的に複雑な面があるため,一般的に壊れやすいと言われている。とくに,ベッサマチックの場合は,巻き上げたあとでシャッター速度を変更すると,負荷が大きくなり,壊れやすいという説がある。適当にシャッター速度を決め,巻き上げれば,このときはじめて露出計を見ることができる。そこで絞りを調整することで露出をあわせるのだが,設定したシャッター速度では適正な露出が得られないような場合,壊れる可能性が増大するというリスクをもってシャッター速度を変更するか,フィルムを1コマ無駄にするかという選択を迫られる。
 実際に撮影してみると,ファインダーはピントの山がつかみにくく,上記のように露出計も扱いにくい。また,なんといってもボディが重い。その重いボディには,ストラップをつける金具がない。このように,決して使いごこちのよいカメラではないのである。

BESSAMATIC, No.44948
シャッター機械制御,レンズシャッター
シャッター速度B,1〜1/500スピードライト同調全速,X
露出計外光式セレンメーター露出モードマニュアル
マウントデッケルマウント
発売1959年

レチナレフレックスなど,ほかのシステム用のデッケルマウントレンズを流用するためには,ボディ内の識別爪を削る必要がある。ただし,それを削ることによって,ほかになんからのトラブルが生じる可能性がないとは言わない。もし実行するのであれば,自分自身の責任においておこなっていただきたい。(→「ジャンク大帝」参照)