キヤノン

AL-1

Canon / AL-1

 ピントがあうと,ファインダー内の合焦マークが点灯するというしくみをもったカメラである。レンズを駆動させるメカニズムがないのでオートフォーカスにはならないが,内蔵した測距センサによって,前ピン,後ピン,合焦を知らせることができるようになっていた。ピントあわせを少しでも容易にしようというしくみであるが,ほんとうに使いやすかったかどうかは,疑問である。まず,シャッターレリーズボタンを半押しただけでは,ピントの判定がおこなわれない。シャッターボタンを半押ししたままで,レンズのピントリングを操作したりカメラを動かしたりしてカメラから見える被写体の状況を変えてやらねば,ピントの判定が表示されないのである。しかも,ある程度,ピントが大きくはずれているときには,それらの判定は表示されない。「3つのCCDラインセンサー上に結んだ被写体のコントラスト像からピークを探す方式」(*1)とのことなので,静止している被写体の距離を知ることができず,コントラストの変化がなければピントの判定ができない,ということであろう。ともかくこれでは,一眼レフカメラに慣れている者にとっては,マット面でのピントあわせやスプリットイメージによるピントあわせのほうが素早くできたことと思う。視力が衰えて,ファインダースクリーン上の画像のピントが見えにくくなってきたようなときには,もしかするとある程度は役に立ったかもしれない。
 この電子測距システムはキャノンAL-1にとって最大の特徴であるが,実用的な特徴であるかといえば,上記のように疑問が残る。それよりも,絞り優先AE機であることがキヤノンAL-1特徴の1つであるといってもよいだろう。当時のキヤノンの一眼レフカメラでは,大ヒット商品になったAE-1やAE-1プログラムといったシャッター速度優先AE機ばかりが目立ち,絞り優先AEのカメラはあまり目立たない存在だったのである。電源が単4乾電池2本というのも,4SR44を要求するAE-1やF-1などにくらべて財布にやさしく,地味に優れた面となっている。

Canon AL-1, No.3040343
シャッター機械制御横走り布幕
シャッター速度B,1/15〜1/1000
オート時は,2〜1/1000
スピードライト同調1/60sec,X
露出計TTL中央部重点測光露出モードマニュアル,絞り優先AE
マウントキヤノンFDマウント
電源単4乾電池 2本
発売1982年

*1 http://web.canon.jp/Camera-muse/camera/film/data/1976-1985/1982_al1.html