ニコン

ニッコール オート 24mm F2.8

Nikon / NIKKOR-N AUTO 24mm F2.8

 かつて高級カメラと言えば,距離計連動式のビューファインダーを備えた,ライカやコンタックスのようなシステムカメラをさしていた。それに対して一眼レフカメラは,距離計連動式カメラが苦手とする望遠レンズによる撮影や接写などをおこなうときに使う,特殊なカメラとして位置づけられていた。望遠レンズによる撮影を得意とする一眼レフカメラであったが,広角レンズによる撮影は苦手としていた。一眼レフカメラにはミラーが動く空間が必要なため,焦点距離の短いレンズが設計しにくかったという事情がある。また,じゅうぶんに明るくシャープな広角レンズでなければ,一眼レフカメラではピントあわせがおこないにくくなる。そのため,一般的な標準レンズから広角レンズでの撮影は,むしろ距離計連動式カメラのほうが有利な状況があった。それでも距離計連動カメラには,ファインダーでの視野と撮影される範囲とが完全には一致しないパララクスの問題がある。
 一眼レフカメラを活かせる高性能な広角レンズとして,ニコンからは1960年にNIKOR-H Auto 2.8cm F3.5が発売された。このとき,広角レンズでの近距離撮影時における周辺画質の低下をじゅうぶんに補正することができておらず,このレンズの最短撮影距離は0.6mにとどまっていた。この後,近距離補正方式が開発され,それによってさらに短焦点でさらに最短撮影距離の短いレンズとして発売されたのが,NIKKOR AUTO 24mm F2.8である。最短撮影距離は0.3mになり,被写体にぐぐっと迫って広角レンズ特有のパースペクティブを活かした撮り方ができるようになった。被写体に0.3mまで接近しても正確なフレーミングができるのは,距離計連動カメラでは困難な,一眼レフカメラならではのメリットである。

NIKKOR AUTO 24mm F2.8, No.300770
焦点距離24mm 口径比2.8
レンズ構成7群9枚
マウントニコンF カニ爪連動
発売1967年8月発売

Nikon F-501 [not Ai], NIKKOR-N AUTO 24mm F2.8, ACROS

直線的なものを写しても,歪曲は感じられない。実に,堂々としたものである。


Nikon F-501 [not Ai], NIKKOR-N AUTO 24mm F2.8, ACROS

周辺減光?なにそれ,おいしいの?という描写である。このレンズがあればこそ,一眼レフカメラの存在価値が認められたという表現も,大げさではないだろう。

 No.300770のレンズは,レンズ前面の銘板の記載が「Nippon Kogaku Japan」になっているが,No.325093のものは「Nikon」になっている。また,No.300770ではシリアル番号の前に「No.」があるのに対して,No.325093では「No.」がない。さらに記載される順序もかわっており,「Nippon Kogaku Japan No.300770 NIKKOR-N Auto 1:2.8 f=24mm」であるのに対して,「Nikon NIKKOR-N Auto 1:2.8 f=24mm 325093」のように,シリアル番号が後になっている。